ランニングコストはどこにかかっているのか

データ基盤の毎月のコストは、図のように4つの要素に分かれます。要素ごとに、効く削減の手段が違います。
DWHのクエリ・ストレージ
- 全件スキャンを減らす
- パーティション・マート活用
- 古いデータを安い階層へ
ETL・データ連携ツール
- 定額と従量を使い分ける
- 不要な連携を止める
- OSSや国産ツールを検討
BIツールのライセンス
- 未使用アカウントを棚卸し
- 閲覧と編集で権限を分ける
- 利用形態に合う契約に
運用の人件費
- 手作業集計を自動化
- 属人運用を仕組み化
- 監視・対応を効率化
ランニングコストは4つの要素に分かれる。要素ごとに削減のレバーが違う- DWHのクエリ・ストレージ:クラウドDWHの計算・保管にかかる従量課金
- ETL・データ連携ツール:データを集めて取り込むツールのサブスク料金
- BIツールのライセンス:ダッシュボードを使うためのユーザー課金
- 運用の人件費:データの更新や障害対応、改善にかかる人の時間
どの要素が重いかは、会社によって大きく違います。クエリ費が大半を占める会社もあれば、BIライセンスや人件費が効いている会社もあります。だからこそ、まず内訳を見える化することが大切です。
コスト削減の出発点は「可視化」
「コストを下げたい」と思っても、どこにいくらかかっているか分からなければ、手の打ちようがありません。削減は、可視化から始まります。
クラウドには、コストを見える化する仕組みが用意されています。たとえばGoogle CloudのCloud Billingには、予算を設定して超過しそうになると通知する予算アラートや、費用レポートを自動作成する機能があります。まずはこうした機能で、月ごと・サービスごとの費用を把握します。
可視化すると、たいてい想定外に高い項目が見つかります。使われていないのに動き続けているリソース、一部の重いクエリ、契約したまま誰も使っていないツールといった無駄です。Evastの支援でも、最初の大きな削減はたいてい、この棚卸しから生まれます。
クラウド請求が急に高くなる「あるある」
「先月までと使い方は変えていないのに、請求が跳ね上がった」というケースには、共通の原因があります。可視化したときに、まず疑いたいポイントです。
- 開発用のクエリが本番で回り続けている:検証で作った重いクエリを止め忘れ、毎日動いている
- 未使用リソースの放置:使われなくなったテーブルや環境が消されず、課金され続けている
- SaaS連携のデータ量増:連携元のデータが増え、従量課金のETLツールの月額が跳ねた
- 無料枠の超過:これまで無料枠に収まっていた利用が、閾値を超えた
- データ転送量(外部への通信):リージョン間やクラウド外へのデータ転送料が積み上がった
このうち重いクエリ・放置リソースは、棚卸しですぐ見つかります。BigQueryで請求が膨らむ典型パターンはBigQueryの料金体系とコスト削減|課金トラップと対策で具体的に解説しています。
DWHのクエリ・ストレージ費を下げる

多くの企業で最初に効くのが、クラウドDWHのコストです。BigQueryのようにスキャンしたデータ量に課金されるDWHでは、クエリの書き方ひとつで費用が大きく変わります。
- 全件・全列スキャンを避ける:
SELECT * をやめ、必要な列だけを指定する - パーティション・クラスタリングで範囲を絞る:日付などで読む範囲を限定し、無駄なスキャンを減らす
- よく使う集計はマートにする:生データを毎回集計せず、加工済みのテーブルを再利用する
- 古いデータは安い階層へ:アクセスの少ないデータを、低コストのストレージに移す
たとえば100GBのテーブルに SELECT * を繰り返すのと、必要な数列だけを読むのとでは、スキャン量が10分の1以下になることもあります。BigQueryの具体的な削減策はBigQueryの料金体系とコスト削減|課金トラップと対策で詳しく解説しています。
なお、従量課金と定額(容量ベース)のどちらが安いかは、使い方で変わります。電気の従量プランと定額プランの選び分けと同じで、利用が一定量を超えて安定しているなら、容量予約やコミットメント割引で2〜3割安くなることもあります。クエリの実行頻度やスキャン量によって損益分岐点が動くため、DWHの選定段階からコストを意識することが大切です。SnowflakeとBigQueryのコスト構造の違いはSnowflakeとBigQuery比較:コスト・性能・機能の違いと選び方で比較しています。
ETL・BIツールのライセンス費を下げる

ツールのサブスク料金も、見直すと差が出る領域です。
ETL・データ連携ツールは、課金体系を使い方に合わせるのが基本です。恒常的に大量のデータを扱うなら定額制、時期によってデータ量が増減するなら従量制が向きます。従量制のツールは、SaaSのデータ量が想定より多いと月額が数倍になることもあるため、注意が必要です。使っていない連携を止めることや、無償のオープンソース(dbt・Airflowなど)や低価格な国産ツールへの乗り換えも、費用を下げる選択肢になります。ツール選定の観点はデータ連携ツールの選び方:コスト・サポート・コネクタ数で比較で解説しています。
BIツールは、ライセンスの持ち方で費用が変わります。
- 未使用アカウントを棚卸しする:異動や退職で使われなくなったアカウントを整理する
- 閲覧と編集でライセンスを分ける:見るだけのユーザーに高い編集者ライセンスを割り当てない
- 利用形態に合う契約を選ぶ:ユーザー数が多いならサーバーライセンス型が有利なこともある
主要BIツールの選び方はPower BI・Tableau・Looker比較|5軸の違いと選び方【2026年版】もあわせてご覧ください。
運用の人件費を下げる

見落とされがちですが、人件費もランニングコストの一部です。毎月、誰かが手作業でデータを集計したり、レポートを作り直したりしているなら、そこにコストがかかっています。
データ基盤を活かして手作業を自動化すれば、この時間を削減できます。月40時間かかっていたレポート集計を自動化すれば、その人件費がまるごと浮く計算です。あわせて、特定の担当者しか分からない属人的な運用を仕組み化しておくと、その人が抜けたときの混乱も防げます。
データの整備や運用の効率化まで含めた体制づくりは、データマネジメント支援のような形で外部と並走する方法もあります。
コスト削減を続ける仕組みをつくる

ここまでの削減策は、一度やって終わりではありません。データ量も利用者も増え続けるため、放っておけばコストはまた膨らみます。大事なのは、図のように可視化・最適化・定着のサイクルを毎月回すことです。
① 可視化どこにいくらか把握
予算アラート・コストレポート
→
② 最適化無駄を削る
クエリ・ツール・人件費を見直す
→
③ 定着続ける仕組みに
月次でレビューし、習慣化する
↺ 毎月くり返す
コスト削減は一度きりではなく、可視化・最適化・定着を回し続けるクラウドコストを組織で継続的に最適化する考え方は、FinOps(クラウド財務管理)と呼ばれます。難しく考える必要はありません。要は、月に一度コストを見る担当と習慣を決めておくことです。「今月はどこが増えたか」を確認し、増えた原因に手を打つ。これを続けるだけで、じわじわした増加を抑えられます。
Evastの支援でも、未使用リソースの削除やオーバースペックの見直しといった棚卸しだけで、クラウドコストが1〜3割下がるケースは珍しくありません。一度の大掃除より、毎月の小さな手入れが効きます。
まとめ:コストは「要素ごと」に、続けて下げる
データ基盤のランニングコスト削減について、要点を整理します。
- ランニングコストはDWHのクエリ・ストレージ/ETL・連携ツール/BIライセンス/運用人件費の4要素に分かれる
- 削減はまず可視化から。予算アラートとコストレポートで「どこにいくらか」を把握する
- DWHはスキャン量を減らす(全件スキャン回避・パーティション・マート)。古いデータは安い階層へ
- ツールは課金体系を使い方に合わせ、未使用のアカウント・連携を棚卸しする
- 手作業の自動化で人件費も下げる。削減は毎月続けて初めて効果が残る
ランニングコストは、放置するとじわじわ増え、手を入れれば全体で2〜4割は下げられる費目です(うち、未使用リソースの整理や課金体系の見直しだけでも1〜3割が目安)。まずは今月の請求の内訳を、要素ごとに見るところから始めてみてください。
データ基盤のコスト削減はEvastへ
株式会社Evastでは、データ基盤の設計・構築からBIダッシュボード開発、運用定着まで を一貫して支援しています。
- 「クラウドの請求が想定より高い。どこを削れるか診てほしい」
- 「コストを抑えた構成に見直したい」
- 「コストを継続的に管理する仕組みをつくりたい」
現状のコスト内訳の可視化や、削減できる箇所の洗い出しからでも構いません。自社の状況に合った見直しを知りたい方は、データ活用の無料診断もご利用ください。
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