FivetranのMAR課金の仕組み

Fivetranの料金は、Free・Standard・Enterprise・Business Criticalの4プランで構成されます(2026年7月時点)。旧Starterプランと旧Private Deploymentプランは2025年3月頃に廃止されており、現行の料金体系を確認する際はこの点に注意が必要です。
課金の中心はStandard以上のプランで採用されているMARです。MARとは、暦月内にソースからデスティネーションへ同期された行のうち、主キー単位で重複排除した行数を指します。
同じ行がその月に何度更新(insert・update・delete)されても、カウントされるのは1回だけです。翌月にその行への変更がなければ、再びカウントされることもありません。
つまりMARを押し上げるのは「更新の回数」ではなく、「その月に変更があった行の母数」です。対象テーブルの総レコード数が多く、かつ月内に変更される割合が高いテーブルほど、MARは大きくなります。
Standardプランの単価
Standardプランの基本スペンドレート(利用量1単位あたりの請求単価)は、公式サイトの実例に基づくとおおむね100万MARあたり500ドルです。実例として、Facebook Ads連携で34,479MARの月は17.23ドル、Marketo連携で847,574MARの月は423.78ドルという計算が示されています。使用量が増えるほど、コネクタ単位での単価は逓減します。
ここで注意したいのが、2025年3月1日にFivetranがMARの集計方式を「アカウント全体の合算」から「コネクション(コネクタ)単位」に変更したことです。以前はアカウント全体のMARを合算してボリュームディスカウントが効いていましたが、現在はコネクタごとに単価が決まります。複数の小規模コネクタに処理を分散させても、以前のような規模のディスカウントは期待できません。
上位プランで増える機能
Enterprise・Business Criticalへ上がると、使える機能が広がります。Enterpriseで追加される主な機能は次のとおりです。
- 同期頻度の短縮(Standardは15分間隔、Enterpriseは1分間隔)
- カスタムロールによる権限管理
- VPNトンネル(年契約限定)
- 顧客管理キーによる暗号化
Business Criticalはさらに、次の機能を含む最上位プランです。
- PCI DSS Level 1認証
- プライベートネットワーキング
- 99.99%のSLA(Service Level Agreement、稼働率を保証する契約条件)
- SOC2・HIPAA・GDPRなどのコンプライアンス認証
上位プランごとの具体的な単価は公式サイトで個別に確認する必要があります。
なお、Transformations(dbt Core連携などのデータ変換機能)は行数ではなく、月間モデル実行数(MMR)の階層課金です。
- 0〜5,000回:無料
- 5,001〜30,000回:1回0.01ドル
- 30,001〜100,000回:1回0.007ドル
- 100,001回以上:1回0.002ドル
dbtによる変換の基本を確認したい場合は、dbtとは?データ変換をコード管理するツールの仕組みを解説にまとめています。
費用が跳ね上がる典型パターン

なぜFivetranは高いと言われるのか。MARの定義を押さえたうえで、実際に請求が膨らみやすい原因を見ます。データ連携ツール選定の記事では、SalesforceのActivityやEmailMessageのような更新頻度の高いオブジェクトが費用を押し上げる例に軽く触れました。ここでは、2026年の料金改定を踏まえた、より踏み込んだ原因を整理します。
たとえばECサイトの注文処理のように、1件の注文が受注テーブル・在庫テーブル・決済テーブルなど複数テーブルへ書き込まれる構成では、業務上は1件のイベントでもMARとしてカウントされる行数はその分だけ増えます。同期対象のテーブルを設計する段階で、こうした「1つのイベントが複数テーブル・複数行に波及する」構造を把握しておくことが重要です。
削除の多いテーブルが新たに課金対象になる
2026年1月1日から、削除(delete)された行もMARの課金対象に加わりました。従来はinsert・updateのみが課金対象で、deleteは無償でした。同一行が月内に何度削除されても課金は1回だけですが、ステータス管理用の一時テーブルやキューテーブルのように物理削除を多用する設計は、この変更で新たにコストへ跳ね返ります。
History Modeの繰り返し更新が課金対象になる
過去の状態を保持するHistory Mode(履歴管理モード)を使っている場合、2026年1月1日から同一行への繰り返し更新もそのつどMARとしてカウントされるようになりました。回避するには、Soft DeleteモードまたはLive syncモードへの切り替えが必要です。監査ログのように更新頻度が高いテーブルをHistory Modeで運用している場合は、モードの見直しが有効なコスト対策になります。
使っていないコネクタの最低課金が積み上がる
2026年1月1日から、Standardプラン(月次PAYG=月ごとに使った分だけ支払う従量課金プランを含む)で月間MARが1〜100万の全接続に対し、月額5ドルの最低課金が適用されるようになりました。ゼロMARや非アクティブな接続には課金されませんが、検証用に作ったまま放置しているコネクタが複数あると、この最低課金だけで積み上がります。
コネクタ単位課金でディスカウントの前提が変わる
前述のとおり、2025年3月からMARはコネクタ単位で集計されます。テーブルを複数のコネクタに分けて構築している場合、以前のようなアカウント全体でのボリュームディスカウントは働きません。設計時点でコネクタの分け方を見直すだけで、単価が変わることがあります。
スキーマ変更による再同期は誤解されやすい
新規カラムの追加などでテーブルが再同期されると「請求が跳ね上がるのでは」と心配されることがありますが、データ自体に変更がない行が再取得されただけでは、MAR課金は発生しません。課金対象になるのは、あくまでデータに変更があった行です。この点は必要以上に恐れなくてよい部分です。
株式会社タイミーは、OSSのEmbulkからFivetranへ移行し34コネクタを運用しています。運用工数を約7人日から1.5時間に削減した一方で、「使用量に応じて値引き率が上がる課金構造のためコスト予測が難しく、変更頻度の高いツールは高額になりがち」という課題も挙げています。運用の省力化と費用の予測しやすさは、必ずしも両立しないという実例です。
このトレードオフを踏まえると、更新頻度の高いツールを複数抱える組織ほど、移行前にMARモニタリング体制を先に整えておくのが安全です。
他社ツールとの価格比較

料金を比較する前提として、そもそも「何に対して課金するか」がツールごとに違います。Fivetranは同期した行数(MAR)、troccoは処理時間、Stitchは転送行数が基準です。クラウドDWHの料金比較でも同じ構図がありますが、クラウドDWH費用比較|BigQuery・Snowflake・Redshiftで見たとおり、課金の基準が違うツール同士は単価だけで優劣を決められません。
| ツール | 課金の基準 | 料金目安 |
|---|
| Fivetran(Standard) | MAR(コネクタ単位の月間アクティブ行数) | 100万MARあたり約500ドルが基本レートの目安(使用量やコネクタ単位で変動) |
| trocco | 処理時間 | Free=2時間、Starter=30時間/月額75,000円、Essential=250時間/月額150,000円、Advanced=600時間/月額300,000円、Professionalは要見積もり |
| Stitch | 転送行数(月契約) | Standard=月100ドル〜(月5〜300百万行から選択)、Advanced=月1,500ドル(年契約のみ、月1億行)、Premium=月3,000ドル(年契約のみ、月10億行) |
料金プランは各社の判断で改定されるため、契約前に必ず公式サイトの最新情報を確認してください。
更新頻度の低い大量データを扱う場合はtroccoの時間課金が有利になりやすく、テーブル数は多いが1件あたりの処理は軽い場合はFivetranのMAR課金が合うこともあります。行数ベースで予算感を掴みたいならStitchの転送行数課金も選択肢に入ります。
Evastが実際の案件でツールを提案する際は、対象テーブル数が多く、かつ月内に変更される行の割合が全体の一部にとどまる構成であればFivetranを勧めることが多いです。コネクタの追加・削除だけで同期対象を柔軟に増減できる手離れのよさが、この構成では活きるためです。
反対に、更新頻度の高い大規模テーブルを少数抱えていて、コネクタ運用の手離れよりも月額費用の見通しやすさを優先したい場合は、troccoの時間課金を勧めます。行数が増えても処理時間の枠内に収まっていれば追加費用が発生しないため、予算を固定しやすくなるからです。
年間契約で行数の上限を先に確保し、費用そのものを固定したいという要望が強い場合は、Stitchの転送行数課金が候補に入ります。実務ではこの3パターンのいずれかに当てはまることが多いため、まずは自社のデータがどれに近いかをこの基準に照らして確認するところから始めるのを勧めます。
運用体制やコネクタ対応まで含めた選び方は、データ連携ツールの比較と選び方|自動化・コスト・コネクタで解説しています。
コストを抑える実践的な方法

料金の仕組みを踏まえると、Fivetranのコストを抑える打ち手は次のように整理できます。
- 同期対象のテーブル・カラムを絞る:更新頻度の高い履歴系・監査系テーブルを無自覚に全件同期しない。必要な列だけを選択する
- History ModeよりSoft Delete・Live syncを優先検討する:2026年1月の改定以降、History Modeでの繰り返し更新はそのつど課金対象になるため
- 使っていないコネクタは無効化・削除する:月間MARが1〜100万の接続には月額5ドルの最低課金がかかるため、放置している検証用コネクタの数がそのままコストになる
- コネクタの分け方を見直す:コネクタ単位でMARが集計される前提で設計し、無駄な分割を避ける
- 管理画面でMARの推移を定期的にモニタリングし、急増時のアラートを設定する:急増があれば、原因のテーブルを早期に特定して対応する
- Transformationsのモデル実行数を見直す:dbt連携のモデル実行は階層課金のため、不要な実行頻度を減らすだけでコストが下がる
私たちEvastが広告代理店向けに6媒体の広告データ統合基盤を構築した際も、APIが安定している媒体はFivetranのコネクタで同期し、仕様が特殊な媒体は別実装に切り分けました。対象を絞り込んで設計したことで、レポート作成工数を月40時間からほぼゼロに削減しています。導入の詳細は実績紹介でも紹介しています。
発注検討者向けの指針

Fivetranの公式サイトには円建ての価格表が存在せず、日本国内では主にパートナー企業経由での提供が中心です。アシスト株式会社は2025年7月15日付で正式販売代理店契約を締結し、参考料金(税込)は初期費用約250万円からとしています。
クラスメソッド株式会社は2020年7月15日にパートナー契約を締結した国内最古参のパートナーの一つで、日立ソリューションズ東日本も2023年12月15日に契約を結んでいます。いずれも個別見積もりが前提のため、対象テーブルのMAR試算を用意したうえで問い合わせるのが近道です。
自社のデータ環境や既存ツールの利用状況をまだ棚卸しできていない段階であれば、Evastのデータ戦略立案支援で現状診断から一緒に整理することもできます。
導入検討の初期段階では、新規サインアップ時の14日間無料トライアルが使えます。Business Criticalプラン相当の全機能を試せるため、本番相当の設定で実データを流し、MARの実測値を見てから本契約に進むのが安全です。有料プラン契約後も、新規接続を追加するたびにその接続ごとに14日間のトライアルが付与されます。
大規模に使う見込みがあるなら、消費量の上限なしで固定年間価格を支払うEnterprise License Agreement(ELA)という契約形態も検討に値します。
費用だけでなく、Fivetranが持つ実務上の強みも押さえておくべきです。株式会社丸千代山岡家は、Amazon RDS for OracleのデータをFivetranのCDC(変更データキャプチャ)機能でS3上のApache Icebergテーブルへ同期し、Snowflakeから参照する基盤を構築しました。運用工数を月6日から月0.5日に削減し、データ反映を約5分のニアリアルタイムに短縮しています。
同期の自動化やスキーマ変更への追従といった運用面の価値は、MAR課金のコストと合わせて評価する必要があります。前述の広告データ統合基盤の案件でも、APIが安定している媒体だけをFivetranの対象に絞り込み、それ以外は別実装にすることで、運用工数の削減とMARの抑制を両立させています。
Evastが発注前のご相談を受ける際は、対象テーブルのMAR試算とtroccoなど他ツールでの概算費用を突き合わせたうえで、運用工数の削減額がMAR課金の増分を上回る見込みがあるかどうかを判断基準にしています。上回る見込みがあるならFivetranへの移行価値がある、という判断です。
まとめ

Fivetranの料金は、MAR(月間アクティブ行数)という「その月に変更があった行の母数」で決まります。ポイントを整理します。
- MARは主キー単位で重複排除される:更新回数ではなく、変更があった行の総量が課金に直結する
- 2026年1月から削除も課金対象に:物理削除が多いテーブルやHistory Modeの繰り返し更新は新たに影響を受ける
- コネクタ単位で課金される(2025年3月〜):アカウント全体でのボリュームディスカウントは実質廃止された
- 他社ツールとは課金の基準が違う:MAR・処理時間・転送行数のどれが自社のデータの動き方に合うかで比較する
料金体系を理解したうえで対象テーブルを設計すれば、Fivetranの運用工数削減という強みを、コストの見通しやすさと両立させられます。ETLとELTの基本的な違いから確認したい場合はETLとELTの違いとは?5つの比較軸とELTが主流になった理由もあわせてご覧ください。
データ連携基盤の設計・コスト最適化のご相談はEvastへ
株式会社Evastでは、データ連携ツールの選定から、費用を抑えるデータ基盤の設計・構築までを支援しています。MARの試算やコネクタ設計の段階から、発注前のご相談にも対応します。
- 「Fivetranの見積もりが想定より高く、原因を切り分けたい」
- 「これから連携ツールを選ぶので、MAR課金で費用が膨らまない設計にしたい」
- 「既存のFivetran環境を見直して、コストを抑えたい」
現状のデータ環境の診断から、選定・設計・構築までご相談ください。
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