30秒で伝わる、いちばん驚くやつ
先に結論から。こう打つだけです。
freeeの2026年8月の試算表を取得して、前月比で10%以上動いた勘定科目を
一覧にしてください。動いた理由の推測も添えて。
これで科目名・前月・当月・増減率が並んだ表が返ってきます。BIツールも、エクスポートも、関数も要りません。
会計ソフトの画面で試算表を出し、Excelに落として、前月分と並べて、増減率の列を作って……という一連の作業が、1行の指示に置き換わります。ある弁護士の方が「freeeのUIより楽」と書いていましたが、実際に触ると意味がよく分かります。
そのまま使えるプロンプト7本
実際に効くものを、目的別に並べます。事業所名と年月を自分のものに置き換えれば動きます。
1. 月次の異変を拾う
2026年8月の試算表を取得して、前月比・前年同月比で大きく動いた科目を
上位10件、増減額の大きい順に出してください。
月次レビューの最初の5分がこれで終わります。「どこを見るべきか」をAIに絞らせてから人が見るという順番になります。
2. 仕訳の誤りを理由つきで指摘させる
2026年8月の振替伝票を確認して、おかしい仕訳・確認すべき点を
理由つきで一覧にしてください。
実際にこれを試した記録では、前受金にすべき売上が売上高で計上されている点や、地代家賃が支払手数料になっている点が指摘され、しかも「過去分も遡って確認したほうがよい」という補足まで返っています。科目の取り違えは目視だと見落としやすいので、ここは相性がいい領域です。
3. 資金繰りを相談する
直近6か月の入出金の推移を取得して、資金繰りで注意すべき点を挙げてください。
季節性があればそれも指摘してください。
数字を出すだけでなく、解釈まで返ってくるのがMCPの面白いところです。社内に財務の相談相手がいない規模の会社ほど効きます。
4. 取引先ごとの入金遅れを洗う
2026年上期の売掛金のうち、入金予定日を過ぎているものを取引先別に集計して、
金額の大きい順に出してください。
督促の優先順位づけがそのまま出ます。
5. 見積書・請求書を日本語で作る
株式会社〇〇向けに、LP制作30万円・運用サポート月3万円で見積書を作って、
freeeに下書き保存してください。
freeeの画面を開かずに作れます。ただし下書きで止めるのが鉄則です(理由は後述します)。
6. 経費の使われ方を部門で切る
2026年度の経費を勘定科目別・部門別にクロス集計して、
前年度と比べて増えている組み合わせを教えてください。
7. ダッシュボードを作らせる
ここが個人的にいちばん「やられた」と思った使い方です。Claude Codeのようにファイルを書けるクライアントを使うと、こう頼めます。
freeeから直近12か月の月次売上・粗利・営業利益を取得して、
推移が分かるHTMLのダッシュボードを1ファイルで作ってください。
グラフはCDNではなくインラインのSVGで描いてください。
データの取得からグラフ描画まで通しでやってくれるので、BIツールを契約する前に「そもそも何を見たいのか」を試せます。毎朝集計してSlackに流す、という運用にしている例もあります。
設定は15分で終わる
いちばん簡単なのはリモート版です。
- Claude Desktopの設定から「カスタマイズ」→「カスタムコネクタを追加」を開く
- 名前に
freee、URLに https://mcp.freee.co.jp/mcp を入力する - freeeへのログインとアクセス許可の画面が出るので承認する
- 対象の事業所を選ぶ
以上です。インストールも、APIキーの発行も要りません。
Claude Codeならプラグインとして入ります。
claude plugin marketplace add freee/freee-mcp
claude plugin install freee-mcp@freee-mcp-marketplace
ローカル版を使う場合は、freeeアプリストアでアプリを作り、コールバックURLに http://127.0.0.1:54321/callback を設定してから対話ウィザードを走らせます。
npx freee-mcp configure
対応範囲は会計だけではありません。人事労務、請求書、工数管理、販売、固定資産、申告、freeeサインまで13ドメイン490操作をカバーしています。
なお、マネーフォワード クラウド会計も2026年3月26日にリモートMCPを全プランで提供開始しました。freeeのリモート版が翌27日なので、ほぼ同時です。会計SaaSがそろってこの方向に動いた時期でした。
裏側の設計が地味にすごい
少し技術寄りの話ですが、ここは知っておくと納得感が違います。
490個の操作を1つずつAIのツールとして登録すると、AIは選択肢に溺れます。実際、ツール数が増えると選択精度が43%から14%未満まで落ちるという計測もあります。
freee-mcpはこれを、HTTPメソッド単位の5つのツールに集約して解決しました。
freee_api_get / post / put / patch / delete の5本だけ- どのパスを叩けるかはOpenAPIスキーマで検証する
- 使えるパスは
freee_api_list_paths で引く
490個が5個になっています。だから安定して動く、というわけです。
触ると分かる、3つの限界
便利な話ばかり書きましたが、公開から半年たって複数の書き手が独立に同じ3点を挙げています。ここは知っておいたほうが期待値を間違えません。
① ファイルが送れない
MCPにバイナリ転送の仕様がなく、領収書などの証憑を添付できない。リモート版では回避手段もない
解き先:証憑の取り込みは基盤側のパイプラインで
② 仕訳変換APIがない
明細の取得も取引の登録もできるが、明細と勘定科目を結びつける処理そのものがAPIに存在しない
解き先:仕訳ルールを組織の資産として外に持つ
③ トークンが重い
270本規模のAPI定義が毎回コンテキストに載る。使い方次第で年間コストがfreeeの月額に並ぶという試算も
解き先:頻出の集計は事前に基盤で作り置く
MCP単体では越えにくい3つの壁。いずれもAIの賢さではなく、データの入口側の設計で解く問題領収書などのファイルを送れません。 MCPプロトコルにバイナリ転送の仕様がないためです。ローカル版には回避手段がありますが、リモート版では使えません。
明細から仕訳への変換APIがありません。 明細の取得も取引の登録もできるのに、両者を結びつける処理だけが無い。つまり「銀行明細を読んで自動で仕訳を作る」という、いちばん期待される部分は、MCPを入れただけでは埋まりません。
トークンが重いです。 API定義が毎回コンテキストに載るため、使い方によっては年間のAIコストがfreeeの月額料金に並ぶという試算もあります。
ひとつだけ、必ず気をつけること
ここは短く、でも強めに書きます。
freee-mcpは書き込みが標準で有効です。 取引の登録・更新・削除がAIから実行できます。ソースを読むと、GET以外のメソッドにはすべて破壊的操作の印が付いており、読み取り専用モードのフラグは見当たりません。
対策はシンプルです。
- OAuthアプリのスコープを参照だけに絞る
- 検証はテスト事業所で行う
- 書き込みの自動承認を有効にしない
これだけやっておけば、事故の目はかなり潰せます。逆に言うと、何も考えずに本番事業所へ書き込み権限つきでつなぐのは避けてください。
毎月使う数字は、基盤側に置く
最後に、もう一段効かせたい方向けの話を少しだけ。
MCPが強いのは調べ物と操作です。「今月の交際費は?」「この伝票を直して」は圧倒的に速い。
一方で、毎月同じ定義で出す数字には向きません。LLMの推論は同じ質問でも結果が揺れることがあり、取締役会の資料が実行のたびに変わると困ります。また、会計と販売・広告・人事を横断した集計や、締め後修正を含む過去時点の再現も、MCP単体では担保できません。
MCP直結で足りる
- 取引・請求書の登録と修正
- 特定の伝票を探す
- 「今月の交際費は?」の単発集計
- freee内で完結する操作
境界
データ基盤が要る
- 会計×販売×広告の横断集計
- 毎月同じ定義で出す経営数値
- 締め後修正を含む過去時点の再現
- 取締役会に出す確定値
freee MCPが届く範囲と、データ基盤が受け持つ範囲。単一SaaS内の操作はMCPが速く、横断と時系列は基盤側が要る実務的には、MCPで「何を見たいか」を探して、繰り返し使うものだけ基盤に移すという順番が無駄がありません。いきなり基盤から作ると、使われないダッシュボードができがちです。先にMCPで探索できるようになったのは、むしろ基盤づくりにとって良い変化だと考えています。
freeeのデータをBigQueryに載せる具体的な方法はfreee・マネーフォワード会計データをBigQueryに連携する方法5つと費用相場に、指標の定義をどこに置くかはセマンティックレイヤーとは?BIツールとの違いと導入判断にまとめました。
まとめ
freee MCPは、つなぐのに15分、効果が出るのは初日という珍しいタイプの道具です。試算表の異変出し、仕訳チェック、資金繰りの相談、ダッシュボード生成まで、この記事のプロンプトをコピーすればそのまま試せます。
限界もはっきりしています。ファイルが送れない、仕訳変換のロジックは自分で持つ必要がある、書き込みが標準で開いている。ただしこれらは使い始めてから考えればいい話で、参照スコープに絞ってテスト事業所でつなぐぶんには、今日始めて何も困りません。
弊社では会計を含む複数SaaSのデータ統合を支援しています。MCPで探索したあと「この数字は毎月同じ形で出したい」となった段階でご相談いただくのが、いちばん話が早いです。費用感はデータ基盤構築の費用相場は?見積もりの内訳と判断基準を解説にまとめてあります。