課金モデルの違い(何に対して払うか)
記載する単価は2026年時点・米国リージョンのオンデマンド換算の目安で、実額はリージョン・契約・エディションで変わります。金額の単位は、BigQueryのスキャン量が2進のTiB、ストレージ系が10進のTB(GB建て)と、各社の課金の実態に合わせています。

費用比較の出発点は、3社が何に対して課金するかがそもそも違う、という点です。
- BigQuery(オンデマンド):クエリが読み込んだデータ量(スキャン量)で課金。1TiBあたり約$6.25で、読まなければ課金されない
- Snowflake:ウェアハウス(計算リソース)の稼働時間で課金。サイズが1段階上がるごとにクレジット消費が倍になる
- Redshift:ノード、またはRPU(Serverlessの計算単位)の稼働時間で課金。動いている分だけ払う
たとえるなら、BigQueryは読んだページ数で払う図書館のコピー機、Snowflakeは借りた机の広さ×時間で払うレンタルオフィス、Redshiftは借りた台数×時間で払う貸しサーバー。同じデータ分析でも、料金メーターの回り方がまったく違います。
BigQueryとRedshiftには、稼働時間に依存しない定額(容量)モデルもあります。BigQueryはスロットを固定で買うEditions、RedshiftはRA3ノードやReservedです。定常的に重い使い方ではこちらが有利。Redshift単体の料金体系や規模別の費用相場は、Amazon Redshiftとは?料金体系と費用相場を解説で個別に掘り下げています。
主要な軸で並べると、次のようになります(2026年時点・米国リージョンの目安)。
| 軸 | BigQuery | Snowflake | Redshift |
|---|
| 課金の基準 | スキャン量(約$6.25/TiB)or スロット定額 | 稼働時間×サイズ(約$2〜4/クレジット) | RPU時間(約$0.375/RPU時)or ノード時間 |
| 最低課金 | クエリごとに最低10MB | 起動ごとに60秒 | 実行ごとに最低60秒 |
| 噛み合いやすい使い方(例) | スパイキー・アドホック中心 | 同時実行・複数チーム | AWS中心・定常負荷・既存Redshift資産 |
| 無料枠・試用 | 毎月1TiB+10GB(恒常) | エディション別の試用クレジット | Serverless $300/90日 |
| 最適化の勘所 | 読むデータを減らす | 稼働時間とサイズ | ノード/RPUの適正化・一時停止 |
噛み合いやすい使い方の欄を◎×で断定していないのは、後述のとおり、どれが安いかが使い方で逆転するためです。あくまで傾向で、境界は曖昧。
ストレージ単価の比較

どこが安いかを語るとき、ストレージ単価を気にする方は多いのですが、ここは3社で大きな差がつきません。
| サービス | ストレージ単価(月/TB) | 補足 |
|---|
| BigQuery | 約$20(90日未更新の長期は約$10) | 更新のないデータは自動で割引 |
| Snowflake | 約$23(圧縮後) | 自動圧縮が効く |
| Redshift | 約$24(RA3マネージドストレージ) | ノードと分離して課金 |
単価だけ見ればBigQueryの長期割引がやや有利ですが、実際のストレージ費用は、圧縮率や、Snowflakeの複製・Time Travel(過去の状態を保持する機能)による重複コピーの有無で変わります。単価表だけで安さを判断しないほうが安全でしょう。
費用の大部分を占めるのは、多くの場合ストレージではなく計算(クエリ実行)側。次の章で、代表的な3シナリオで月額を並べます。
月額シミュレーション:データ量別・3社料金比較(100GB/1TB/10TB)
単価だけ並べられてもピンとこない、という声が多いので、共通シナリオで3社の月額を並べてみます。設定は次の3パターン。
- シナリオA(軽め):GA4+CRMの2ソース、保管100GB、月100クエリ(1クエリ平均10GBスキャン)、日中4時間稼働、ユーザー5名
- シナリオB(本格):基幹系+広告+GA4、保管1TB、月1,000クエリ(1クエリ平均50GBスキャン)、日中8時間稼働、ユーザー20名
- シナリオC(大規模):全社データ基盤、保管10TB、月10,000クエリ(1クエリ平均200GBスキャン)、日中12時間+夜間バッチ、ユーザー50名
単価の根拠は、BigQueryオンデマンド $6.25/TiBスキャン+$20/TB月ストレージ、Snowflake Standard $2〜3/クレジット(X-Small=1c/h、Small=2c/h)、Redshift Serverless $0.375/RPU時(最小ベース容量4RPU)+$24/TB月ストレージです。
| シナリオ | BigQuery(オンデマンド) | Snowflake(Standard・Sサイズ) | Redshift Serverless(4RPU) |
|---|
| A:100GB/軽め | 約3〜5万円(無料枠内で数千円になる場合も) | 約5〜8万円 | 約5〜8万円 |
| B:1TB/本格 | 約15〜25万円 | 約18〜28万円 | 約18〜28万円 |
| C:10TB/大規模 | 約60〜100万円(Editionsで70万円前後) | 約70〜120万円 | 約80〜130万円 |
概算レンジで幅を持たせているのは、クエリ設計の良し悪しと稼働時間で大きく振れるためです。ざっくりの相場観として、**軽めで月3〜10万円、本格で月10〜30万円、大規模で月50万円〜**の3段階で予算を組むと、社内合意が取りやすくなるはず。
シナリオAは、BigQueryなら無料枠1TiB/月に収まって実質数千円になることも珍しくない。シナリオCは、BigQueryをオンデマンドのまま回すと100万円を超えるのが普通で、Editionsに切り替えて70万円前後に落とすのが定石です。この試算をベースに、細かい前提(リージョン・エディション・データ転送量)で調整していく流れが実務的でしょう。より詳細な見積もり手順はDWHの料金はいくら?費用の見積もり・試算方法を実例で解説、構築費まで含む全体像はデータ基盤構築の費用相場にまとめました。
ワークロード別の噛み合わせ

シミュレーションで幅を持たせたのは、同じDWHの同じ処理でも、設定ひとつで費用が数倍変わるためです。BigQueryはパーティション設計の有無で読むデータ量が数倍変わり、Snowflakeはサイズを1段上げるだけでクレジット消費が2倍、Redshiftも最低ベース容量とスパイキー度合いで数倍ぶれる。3社間の単価差より、同じサービス内での使い方の差のほうが大きい、というのが現場の実感でもあります。
だからこそ比較表でどれが安いと決め打ちせず、代表的な4つのパターンで有利・不利を見ていきます。
普段は低頻度、たまに重い(スパイキー・アドホック型)
普段はほとんど使わず、必要なときだけ重い分析を回す使い方です。この場合はBigQueryのオンデマンドが噛み合います。使わない時間の課金がゼロで、読んだデータ量にだけ払うためです。
Snowflakeもauto-suspend(自動停止)で近づけますが、起動のたびに最低60秒の課金が積み上がる。Redshift Serverlessも止まれば課金は止まるものの、最低ベース容量が効きます。
日中フルで回る(定常・高負荷型)
ダッシュボードやバッチが日中ずっと動く使い方では、定額系が有利になります。BigQueryをオンデマンドのまま高頻度で回すと、スキャン課金が積み上がって膨らむ。BigQuery EditionsやSnowflakeの容量コミット、RedshiftのReservedに切り替えると、40〜60%規模で下がることも珍しくない。
複数チームが同時に使う(同時実行型)
部門やチームが並行してクエリを投げる使い方では、Snowflakeが構造的に有利です。ウェアハウスをチームごとに分けられ、同時実行が増えても費用を部門ごとに按分・制御しやすいため。Redshiftもワークグループの分離で対応できます。
データ量が非常に大きい
ストレージ単価は横並びなので、ここでの差はクエリ側に出ます。BigQueryをオンデマンドで使う場合、パーティション(日付などで表を内部分割し、読む範囲を絞る仕組み)やクラスタリング(よく絞り込む列で物理的に並べておく仕組み)を設計せずに毎回フルスキャンすると、巨大データではかえって高くつく。設計前提であれば、読む範囲を絞って安く保てます。
中小企業・スモールスタートで選ぶなら?月数万円から始めるDWH
うちは月10名も使わないし、いきなり月30万円は出せない、というPoC・スモールスタートの相談も増えました。3社とも無料枠や試用クレジットが用意されているので、実質0円で始められる余地が意外と広い。
- BigQuery:毎月1TiBのクエリ+10GBストレージが恒常無料。500GB程度の保管+月数十〜百クエリなら、無料枠内で数ヶ月〜半年評価できるケースが多い
- Snowflake:新規サインアップで**$400相当の試用クレジット(30日間)**。X-Small中心・auto-suspend短めなら、Standardエディションで2〜3ヶ月の評価が現実的
- Redshift Serverless:新規向けに**$300分のクレジットを90日間**(提供内容は時期により変動、公式のフリークレジット施策を要確認)。最小ベース容量4RPUで日中数時間の稼働を試すのに向く
有償運用に切り替えた後の本当のスタート費用は、データソース2〜3本・ユーザー10名未満なら月3万〜10万円が現実的なラインでしょう。大切なのは、無料枠が切れた翌月にいきなり10万円請求が来ないよう、リソースモニター(Snowflake)/予算アラート(BigQuery)/使用量アラート(Redshift)を最初から設定しておくこと。無料で試したら止まらず数十万円請求が来た、というのは無料枠系DWHでよくある事故です。
Databricksや小規模なマネージドPostgres系の選択肢もあり、コストだけで見ればそもそもDWHでなくてよいケースもあります。基礎から選び方を整理したい場合はDWH(データウェアハウス)とは?クラウドDWHの比較と選び方を参照してください。
隠れコストの整理:見積で見落としがちな費目
3社の料金カタログ表だけを見て見積もると、運用開始後に聞いていない請求が積み上がることがあります。よくある隠れコストを3社横並びで整理します。
BigQuery
- ストリーミング挿入:バッチロード(無料)と違い、$0.05/GB程度が別途課金。リアルタイム連携で月数万円上乗せされることも
- エグレス(データ転送):GCP外や他リージョンにエクスポートすると1GBあたり数円〜十数円。ダッシュボードツール側で頻繁にコピーすると効く
- Storage API利用:Looker Studio以外のBIから読むと、Storage Read API課金(約$1.10/TiB)が発生
Snowflake
- Time Travel/Fail-safe:デフォルト1〜7日+7日で、テーブルの過去状態を保持するぶんストレージが2〜3倍に膨らむことがある
- クラウドサービス層:メタデータ操作が全計算の一定割合(実務的には10%が目安、公式仕様の最新値は要確認)を超えると別途課金。dbt runの多用で意外と積み上がる
- リージョン間レプリケーション:DR構成でリージョンを分けると、ストレージが単純に2倍+転送料
Redshift
- マネージドストレージ超過:RA3のノード単位の付帯ストレージを超えると、$24/TB月が別課金
- クロスリージョン・クロスAZ転送:$0.02/GB程度。他AWSサービス連携が多いと効く
- Concurrency Scaling:無料枠(1時間/日)超過分は通常の秒課金。BIツールから同時実行が張り付くと発生
請求が想定の2倍だった、というケースの8割はこの隠れコスト系です。見積もり時はカタログ単価の1.3〜1.5倍で見ておくのが安全側。DWH別の詳しい対策は、BigQueryの料金体系とコスト削減とSnowflakeの料金体系とコスト削減にまとめています。
乗り換え検討時のコスト観点:Redshift→BigQuery、Snowflake→Redshift
今のDWHが高いので乗り換えたい、という相談も増えていますが、乗り換えのコストは年間ランニング差分だけでは判断できません。移行工数と、移行後の再最適化に必要な期間まで含めて計算するのが実務的でしょう。
Redshift → BigQuery(AWSからGCPへ)
- 移行工数の主戦場はSQL方言の差(Redshift/PostgreSQL系→BigQuery Standard SQL)と、dbtプロジェクトの書き換え、IAM/権限の再設計
- 目安として、テーブル100本・dbtモデル200個規模で3〜6人月。年間ランニングが200万円下がる見込みなら、投資回収は1〜2年
- 相性が良いのは、スパイキーな使い方に変わってきたRedshift Serverless
Snowflake → Redshift(コスト理由でAWSに寄せる)
- 逆方向はレア。Snowflakeの機能(Zero-Copy Clone、Time Travel、Marketplace)に依存していると移行が重い
- クラウドを寄せてトータルコストを下げたい、AWSの割引契約・専用線を活かしたい、というケースが中心
- 目安工数はRedshift→BigQueryよりやや重く、5〜10人月規模
BigQuery ↔ Snowflake
共通の判断軸は、①移行工数(3〜10人月)を単価100万円/月で金額換算、②乗り換え後の年間ランニング差分、③既存BI・データパイプラインの改修範囲、の3点。年間差分×3年>移行工数の1.5倍が、ざっくりGOラインです。3社比較の前段として全体像を掴みたい場合は、データ基盤ベンダー比較の観点も参考にしてください。
BigQuery・Snowflake・Redshift 選び方フローチャート

どれが安いかから入ると答えが出ないので、次の4分岐で順番に絞ると決めやすくなります。テキストベースのフローチャートです。
【Q1】すでに使っているクラウドは?
├─ GCP/GA4中心 → BigQuery寄り(Q2へ)
├─ AWS中心 → Redshift寄り(Q2へ)
└─ マルチクラウド/未定 → Snowflake寄り(Q2へ)
【Q2】ワークロードは?
├─ スパイキー(低頻度・アドホック中心) → オンデマンド系
│ └─ BigQueryオンデマンド/Snowflake auto-suspend/Redshift Serverless
└─ 定常(日中フル稼働・バッチ多め) → 定額系
└─ BigQuery Editions/Snowflake容量コミット/Redshift Reserved
【Q3】同時に使うチーム数は?
├─ 1〜2チーム → 単一ウェアハウス/クラスタで十分
└─ 3チーム以上・部門按分あり → Snowflake優位(ウェアハウス分離しやすい)
【Q4】データ量は?
├─ 〜1TB → シナリオA/B想定:どの3社でも実用可
├─ 1〜10TB → 設計(パーティション・サイズ・ノード)が効く
└─ 10TB超 → BigQuery Editions or Snowflake Enterprise or Redshift RA3+Reserved
このフローを回した結果と、選定後に効く最適化の効きどころが違うことも押さえておく必要があります。同じコスト削減でも、BigQueryは読むデータを減らすこと(パーティション設計、SELECT *の回避)、Snowflakeは稼働時間とサイズの管理(auto-suspend短縮、オーバーサイジング回避)、Redshiftはノード/RPUの適正化と一時停止と、効きどころがまったく違います。ツールを決めたら、そのツールの効きどころを設計段階から組み込むのが近道でしょう。
なお、AI/ML中心の分析基盤ならDatabricks、Microsoft 365基盤ならAzure Synapseも候補に入ります。純粋なDWH費用比較で3社に絞れなかった場合は、データ基盤ベンダー比較の観点を挟んで判断材料を広げてください。
まとめ:BigQuery・Snowflake・Redshift 比較サマリ

クラウドデータウェアハウスの費用比較の要点を整理します。
- 課金の基準が3社で違う:BigQuery=スキャン量、Snowflake=稼働時間×サイズ、Redshift=ノード/RPU時間
- 月額感は3段階:軽め(100GB)で月3〜10万円、本格(1TB)で月10〜30万円、大規模(10TB)で月50万円〜
- どれが安いかはワークロード次第:スパイキーはBigQuery、同時実行はSnowflake、AWS中心・定常負荷はRedshiftが噛み合いやすい
いちばん安いDWHを探すより、自社のワークロードを1時間棚卸ししてから3社の見積を取る、が最短ルート。DWHそのものの基礎はDWH(データウェアハウス)とは?にまとめています。
クラウドDWH選定・コスト設計のご相談はEvastへ
株式会社Evastでは、BigQuery・Snowflake・Redshiftの選定から、費用を抑えるデータ基盤の設計・構築までを支援しています。ワークロードの見極めから課金モデルの選択、最適化の設計まで、発注前の段階から伴走します。
月額シミュレーションを自社データで作りたい方向け
「本記事のシナリオA/B/Cは分かったが、うちの実データで並べたい」というご相談が増えています。貴社のワークロード(データ量・利用人数・稼働時間帯・現在のBI/ETL構成)をヒアリングし、BigQuery・Snowflake・Redshiftの月額試算表を無料で作成します。乗り換え検討の場合は、現行請求書との差分レポートまでお出しします。
- 「どのクラウドDWHが自社の使い方に合うか、費用面で判断したい」
- 「今のDWHの費用が高く、乗り換えるべきか相談したい」
- 「これからDWHを選ぶので、コストが膨らまない構成にしたい」
現状のデータ環境の診断から、選定・設計・構築までご相談ください。
→ DWH選定・月額試算(無料)を依頼する → データ基盤構築サービスを見る → 関連記事:DWHの料金はいくら?費用の見積もり・試算方法